お知らせ

法話(◆2012年6月) 2012年06月01日

この世に生まれてきたからには、誰もが幸せになりたいと願っていると思います。

何を幸せと思うかは、人それぞれでしょう。思いが叶うように、より豊かな暮らしができますようにと、祈ったり願ったりする相手が神様であり仏様だと考えておられる人も多いと思います。

それに対して、仏教の開祖・お釈迦さまは、思い通りにならないところに私たちは今生きているのだと、教えられた方です。

この世界を仏教では娑婆(シャバ)といいますが、シャバとは思い通りにならないところという意味です。この世に生まれてからいのち終わるまで、何もかも思い通りでしたという人生などあり得ない世界に生きているのです。

平穏な日々を願いながら、目や耳にはいるさまざまなできごとによって、私たちの心は揺れ動きます。「三味線のない家はあっても、コトのない家はないわいなあ」というのが、私のひいばあちゃんの口癖だったといいますが、まさにそういう現実です。腹を立て、イライラし、妬みや軽べつ、恨みや憎しみ、心配ごとや将来への不安など、心休まる時のない日暮しです。

こんなコトで一生を終わってしまうのだろうかという人生への疑問を持った時、これらの苦悩を乗り越えて厳しい世界を生き抜き、喜び多い人生への道を教えてくださっている仏教の入り口に立ったと言えるのでしょう。

お釈迦様は命終わるその時まで、たくさんの人々に法を説かれましたが、その相手は常に苦悩を抱えた人でありました。

私たちもまた、仏法を聞いて頂いた命を喜ばせていただきたいものです。

住職 藤岡 義道